ストレスが不妊に影響を及ぼすメカニズムについては、多くの研究が行われています。
関わるストレスが多様な為か、ストレスが直接的に不妊を引き起こすという明確なエビデンスは今のところ確認できていません。
ただ、間接的に身体に影響を与え、妊娠しづらい状態を作り出す可能性は多いにあります。
経験則では、不妊とストレスには確実に関係があり、その理由について解説をしていきます。
目次
解説の前に
ストレスと不妊の関係を理解するためには、まず自律神経の働きを知ることが大切です。
ストレスを解説する前に、自律神経について解説が必要になります。
よく聞くワードでご理解されている方も多いかと思いますが、自律神経は生きていく上で必要な調整を、自分の意思が関わらずに行う独立した機能です。

内臓の働きや発汗、代謝などが影響を受けており、交感神経と副交感神経の2つによって調整され、お互いが常にバランスを取り合っています。
ホルモン調整の多くは自律神経の働きによって行われています。
POINT
・交感神経⇒興奮・緊張
・副交感神経⇒リラックス・安静
大きく捉えると上記の働きがあり、どちらかの働きが高まれば、もう一方が抑えられるように働きます。
自律神経の乱れとはこの働きの不具合のことで、
・一方が過度に働いている場合
・抑える側の働きが弱い場合
何かしらの不具合によって上記の様に乱れが発生し、その不具合の代表が【ストレス】です。
現代社会ではストレスによって、交感神経が過度に働いている場合が圧倒的に多いです。
自律神経について⇒くすりと健康の情報局
ストレスがかかると
ストレスによって交感神経が過剰に働くと、末梢血管が収縮し、骨盤周囲や子宮・卵巣の血流低下につながります。
では、ストレスが掛かると具体的にどのような影響があるのでしょうか?
多くは交感神経が過剰に働く影響で、最も問題があるのが末梢血管の収縮。ざっくり言えば首から下の血流が悪くなることです。
手足などの末端だけでなく骨盤周囲も血流が乏しくなり、子宮・卵巣へ栄養が届きづらくなるため卵胞の成長を妨げたり子宮内膜の血流が悪くなります。

胚移植時の研究では以下のものがあり、
胚移植時の子宮収縮は、体外受精の妊娠率に悪影響を及ぼすこと(Fanchinら. 1998、Zhuら. 2014)
胚移植時の良好な子宮内膜血流は、体外受精の妊娠率に良好な結果をもたらすこと(Kalmantisら. 2012、Wangら. 2018、Mishraら. 2016)
上記の文献の様に、子宮内膜の血流は良い方が良好な成績に繋がる報告がありますが、ストレスはその逆効果。
子宮内膜の血流を悪くするだけでなく、子宮収縮を引き起こすこともあります。
ですので、特に移植時の過度なストレスは移植の成績に悪影響となりやすく、『受精卵のグレード』『妊娠率』など、不安を生みやすい検索は控えた方が良い成績に繋がりやすいです。

ストレスのその他の影響
ストレスはホルモンバランス、血流、生活習慣、男性の生殖機能にも影響します。
ホルモンバランスの乱れ
ストレスが続くと視床下部が疲弊し、ホルモン調整が乱れやすくなります。
ストレスを感じると、脳の視床下部がコルチゾールを促すホルモンを分泌します。
コルチゾールの主な働きは、筋肉でのたんぱく質代謝・肝臓での糖の新生・脂肪の分解などの代謝の促進・免疫抑制や抗炎症作用など、様々な効果を持つ、生きる上で大切なホルモンです。
ホルモンは一定を保つように調整されていますが、ストレスが掛かるとコルチゾールの濃度が増えるため、ストレスホルモンとも呼ばれます。
ただ、常にストレスが掛かる状況に置かれると、ホルモンを分泌し続けて視床下部が疲弊してきます。すると、一定に保っていたホルモンを調整できなくなり、濃度が高すぎたり、低すぎたりと、いわゆるホルモンバランスの乱れに繋がります。
女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロンなど)も同じ視床下部の指令で分泌をされるため、女性ホルモンの分泌も調整できなくなり、排卵障害や月経不順などを引き起こすことがあります。
実際、ストレス過多の月に生理までの周期が短い・長い・こないなど乱れてしまう人も多いです。
血流の低下
ストレスが慢性的に続くと、自律神経の調節が乱れ、交感神経が優位になりやすくなります。
先述で触れましたが、ストレスが掛かると自律神経が乱れます。理由は自律神経の調整が視床下部でも行われているためです。

つまり、視床下部は生きる上で重要な『ホルモンの調整』と『自律神経の調節』を担っている指令室のような機関。ですので視床下部は生きている間は常に働いています。
ストレスが慢性的に続くと、視床下部が疲弊して自律神経の調節が乱れ、特に交感神経が優位に働く状態になります。その結果、末梢血管の収縮し血流が低下します。
生活習慣の乱れ
精神面・身体面のストレスは、睡眠不足、カフェイン、アルコール、過食など生活習慣の乱れにつながりやすくなります。
仕事などで精神面だけでなく、身体面もストレスにさらされると、生活面で悪影響がでやすくなります。
例えば、仕事過多で座りっぱなしであれば肩こり・腰痛・眼精疲労など身体面での慢性的なストレスが発生します。
帰りの時間が遅くなれば睡眠が不足して、翌日に眠気を押してタスクをこなすためにカフェインの摂取が常態化しやすくなり、精神面では仕事で溜まったストレス解消にアルコール摂取が進むなど、生活習慣に乱れが出やすくなります。

アルコールやカフェインは脳など中枢神経に影響を与えるため、視床下部にも関与し自律神経やホルモンバランスの不調が多くなります。
また、睡眠不足の原因で食欲増進ホルモンのグレリンの分泌が増え、過食・偏食にも繋がります。その結果、血糖値の急上昇・急降下を繰り返し、血糖値が下がり始めた時にイライラが発生して更なるストレスを生みます。
この血糖値の乱れも卵子や精子の質に悪影響を及ぼすことが知られています。
男性の生殖機能への影響
ストレスは男性の精子数や運動率にも悪影響を及ぼすことがあります。
ストレスは男性の精子の質にも悪影響を及ぼします。特に精子数と運動率低下は顕著に表れます。
精子数の実例を挙げると、採精の前日にトラブルによって酷いストレスを感じた男性がいました。
普段は、精子濃度の下位基準値(1600万/ml)程度でしたが、採精当日はなんと80万/ml程度と普段の1/20程度になってしまった例がありました。
精子は毎日作られ精巣上体に蓄えられています。しかし、射精の前にストレスを感じると、ストレスに応じて作られた分を出し切ることができなくなり、妊娠が困難な数値まで落ち込んでしまう場合があります。
ストレス緩和のポイント
ストレスを完全に避けることは難しいため、できる範囲で発散することが大切です。
現代社会において、ストレスを避ける・溜めないことは難しいですが、できるだけ発散をすることを推奨しています。

- リラクゼーション:ヨガ、瞑想、深呼吸など。
- 適度な運動:ウォーキングやストレッチは血流を改善し、ストレス軽減にも役立ちます。
- カウンセリング:悩みを専門家や信頼できる人に話す。
- 趣味を持つ:音楽・映画、スポーツなど自分が楽しめる時間を作ることで、気分転換を図る。
ストレス管理は妊活における大切な要素の一つですので、できる範囲でぜひ取り入れてみてください。
終わりに
ストレスは自律神経やホルモンバランスを乱し、妊活に関わる身体の状態に影響します。
ストレスは自律神経・ホルモンのバランスを崩して身体の不調をきたします。
妊活は夫婦共に身体の状態が良いほど良好な成績に繋がるため、精神面・身体面でのストレス対策は重要です。
食事・運動の改善と共に、ストレス緩和も併せて取り入れてみましょう。
よくある質問(FAQ)
ストレスは不妊に関係しますか?
ストレスが直接的に不妊を引き起こす明確なエビデンスは確認されていませんが、間接的に自律神経、ホルモンバランス、血流、生活習慣に影響し、妊娠しづらい状態を作る可能性があります。
ストレスが強いと子宮や卵巣にどんな影響がありますか?
交感神経が過剰に働くことで末梢血管が収縮し、骨盤周囲や子宮・卵巣の血流が低下しやすくなります。その結果、卵胞の成長や子宮内膜の血流に影響することがあります。
移植前後にストレスを感じると良くないですか?
過度なストレスは子宮内膜の血流低下や子宮収縮につながる可能性があります。移植時は「受精卵のグレード」「妊娠率」など、不安を生みやすい検索を控えることも大切です。
妊活中のストレス緩和には何がおすすめですか?
ヨガ、瞑想、深呼吸などのリラクゼーション、ウォーキングやストレッチなどの適度な運動、カウンセリング、趣味の時間を作ることがおすすめです。
妊活中のストレス・自律神経の乱れをご相談ください
血流、ホルモンバランス、生活習慣、体質改善について、現在の状態に合わせてご案内します。
併せて読みたい⇒
・原因不明の不妊について(自然妊娠・女性側)
・原因不明の不妊について(自然妊娠・男性側)
・子宮内膜症について










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