子宮内膜症は強い生理痛のほか、不妊を代表とする様々な悪影響を及ぼす症状です。ただ、耳にはするものの、良く分からないと思う方も多いようです。そこで、今回は当院で治療をされ当ている方の約50%の方が罹患している子宮内膜症についてお伝えしていきます。
子宮内膜症とは?
女性の子宮内膜が子宮の外側で異常に成長する症状です。
通常であれば子宮内膜は生理周期に合わせて厚くなり、妊娠が成立しなければ生理として膣から経血が排出されます。しかし、子宮内膜症の場合は、子宮内膜が何らかの要因で子宮の外側に広がり、卵巣、卵管、腹膜などの周辺組織にまで及びます。この発生原因は現在も不明とされていて、2つの有力な仮説があり、1つが逆流説です。簡単に言えば『経血が逆流をして、卵管の先からお腹の中で生理が起きている』という説です。
- 通常の生理が起きる度に、お腹の中でも生理が起きてしまう。
- お腹の中で経血が様々な部分にくっつく。
- 古くなった経血が炎症など様々な問題を引き起こす。
- 慢性的な腹痛や強い生理痛が起きる。
- 重度の場合、子宮周囲の組織の癒着、病的な内部出血などの合併症が起きる。
上記の様な流れで発生し、生理の度に子宮内膜症が悪化していきます。
また、お腹の中で経血がくっつく場所によって名称が変わり、
- 卵巣の表面にくっついて、古い経血が茶色く見えることから「チョコレート嚢胞」
- 子宮の筋層に潜り込んでくっつくと「子宮腺筋症」
- ダグラス窩と呼ばれる子宮と直腸の間につけば「深部子宮内膜症」
と、呼ばれます。
ですので、こちらも良く耳にするチョコレート嚢胞は子宮内膜症の一種になります。
point⇒子宮内膜症は場所によって名称が変わる
子宮内膜症の症状は?
1番多いの症状は痛みです。およそ9割の方に生理痛が見られます。
生理前には下腹部痛や腰痛も見られる他、周期に関わらず性交痛がみられることがあります。また、PMS症状が強かったり、経血に塊が混じるなど痛み以外にも不定愁訴が多々みられます。
妊活においては卵管や子宮環境を悪くする為、大きな妨げになります。実際、超音波検査で問題が見られなくても、腹腔鏡下手術(お腹に穴を空けて行う手術)で子宮内膜症が発見されるケースもあり、焼灼などの処置後には妊娠率が改善しています。
経験則では、チョコレート嚢胞の方は卵胞の成長が遅い印象があり排卵が乱れる傾向です。不妊との関わりについては、後に記述していきます。
子宮内膜症の原因は?
先述したように、子宮内膜症の原因については明確には解明されていませんが、遺伝的要因や免疫系の異常、ホルモンの影響などが関与していると考えられています。
経験則で言えば、自律神経の乱れも原因の1つだと感じます。子宮・卵巣の働きは自律神経によって調整をされている為、ストレス等で自律神経が乱れがちな方や、血流が悪い方が比較的多く罹患している印象です。
子宮内膜症の診断は?
症状や体調を基にした詳しい問診と、主に超音波検査よって行われます。必要によってMRIによる精密な画像診断や、腹腔鏡で目視下によって診断をされます。
・子宮内膜症の不妊の要素
子宮内膜症は不妊の原因の一つとして重要な要素です。以下の点が主なまとめになります。
- 卵巣の機能障害
子宮内膜症によって卵巣の周囲組織が炎症を起こし、卵巣の正常な機能を阻害することがあります。これにより排卵が不規則になる場合や、排卵そのものが困難になることがあります。 - 卵管の障害
子宮内膜症によって卵管が炎症を起こし、卵管の機能が低下することがあります。これによって受精卵が子宮に移動する際に障害が生じ、妊娠が困難になることがあります。 - 子宮内環境の変化
子宮内膜症の影響で子宮内膜の質や環境が変化し、着床が困難になることがあります。また、子宮内膜症による炎症や出血が受精卵の着床を妨げることがあります。 - 精子との相互作用の障害
子宮内膜症によって子宮内の環境が変化し、精子の移動や受精能力に影響を与えることがあります。
これらの要素が組み合わさることで、不妊の原因となります。子宮内膜症の程度や症状に応じて、薬物療法や手術が行われることがあります。
また、体外受精の場合ですが、子宮内膜症が妊娠後の早産、前置胎盤などのリスクが高くなることが分かっています。⇒亀田IVFクリニックblog
・子宮内膜症の治療
子宮内膜症の治療は、第一に薬物療法を行い、経過観察になります。症状の変化が見られない場合や早期に妊娠を望む場合、複数回の移植で結果が出なかった場合には手術が行われることがあります。
・薬物療法
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):ロキソニンなど抗炎症・鎮痛薬で痛みを軽減します。
- ホルモン療法:ピルやディナゲストなど生理をコントロールして症状を抑えます。
・手術
- 腹腔鏡下手術
子宮内膜症組織を除去するために行われる手術です。腹腔鏡を用いて腹部に小さな切開し、子宮内膜症組織を切除したり焼灼したりします。⇒杉山産婦人科HP - 開腹手術
重度の子宮内膜症や大きな子宮内膜嚢胞の場合に必要となる場合があります。より広範囲な組織の除去が可能です。⇒三井記念病院HP
・子宮内膜症と鍼灸
子宮内膜症に鍼灸は効果的です。子宮内膜症に対する鍼灸の研究があり、以下のような効果が挙げられます。
- 痛みの軽減
鍼灸によって神経系が刺激されると、体内でエンドルフィンなど痛みを和らげる物質が分泌されます。これにより生理痛を軽減します。 - 血行促進
鍼灸は血行を促進し、血流を改善することで、痛みや不快感の軽減をします。また、内膜組織の逆流を減らし、炎症を抑える効果があります。 - ホルモンバランスの調整
子宮内膜症はホルモンの不均衡が影響します。鍼灸はホルモンバランスを整え、症状を緩和する効果があります。 - ストレス軽減
鍼灸はストレスを軽減する効果があります。ストレスが子宮内膜症に悪影響を与える為、鍼灸で症状を緩和できます。
・子宮内膜症に使われる経穴⇒こちらもご参照ください
施術の中で使われる経穴(ツボ)をいくつかご紹介します。セルフ灸や、ツボ押しが効果的です。
- 内関(ないかん)
位置: 前腕の内側、手首の中央から指3本分上の位置。
効果: 自律神経を整える代表穴。ストレス緩和による月経痛や消化器系の改善効果があります。 - 合谷(ごうこく)
位置: 手の親指と人差し指の間のくぼみ。
効果: 4大穴の1つ。全身の痛みを和らげる効果があり、特に腹部の痛みや月経痛の緩和に効果があります。 - 三陰交(さんいんこう)
位置: 足の内側、内くるぶしから上に指4本分上の位置。
効果: 女性のツボ。女性特有の問題に広く用いられる経穴で、月経不順や腹痛の緩和に効果大です。 - 気海(きかい)
位置: 臍の下約3cm位置。
効果: 気が集まる場所。腹部の血行を促進し、気の流れを整えることで腹痛や生理痛を緩和します。
・子宮内膜症とよもぎ蒸し
よもぎ蒸しも子宮内膜症の改善に効果が高いです。
温める事で温熱効果により血流改善が期待できますし、よもぎの有効成分が更に血行を促進してくれる為、相乗効果があります。経血の色が明らかに変わった、塊が目に見えて減った、生理痛が軽減したと多くの声が聞かれます。
冷え症や自律神経の乱れ、血行不良のある方は、鍼灸と併用すると症状緩和が実感できるはずです。
・終わりに
多くの方が悩んでいる子宮内膜症。発生原因は人それぞれですが、ほとんどの方が毎月、重い痛みや辛い不定愁訴と付き合っていると伺います。最終的に手術に踏み切る前に、まずは身体を見直してみませんか?改善の選択肢に鍼灸など自然療法は高い効果が得られます。我々はその症状緩和のお手伝いができたらと思っています。この記事を書いたのは、
東京鍼灸京橋
新橋・日本橋エリアで働く鍼灸師です。PCOSや食生活改善に強みあり。授かりに向けて施術を行いつつ、不妊に悩む方に向けて妊活コラムを書いています。
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