多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の問題は、月経不順やインスリン抵抗性など様々ありますが、一番の問題は『排卵しにくい』ことです。
運動不足を自覚されていれば運動療法で改善は見込めますし、食べたいものを好きなだけ食べていた方は食事療法で改善が見込めます。では、先述を頑張ればPCOSの改善に鍼灸治療は必要ないのでは?とも思えます。これは半分は正解です。しかし、身体の状態が悪ければいくら頑張っても育たない事もあります。この身体の状態を改善するのに鍼灸治療が有効です。
こちらも併せてお読みください⇒多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の食事療法、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の運動療法
●解説の前に
PCOSの問題は『排卵しにくい』こととお伝えしました。ではなぜ?と考えるとシンプルに言えば「血流不足」と「栄養不足」です。もっと言えば卵が育ちにくい状況に陥っているという事。血流が乏しければ卵に栄養が届きません。これは分かりやすいと思います。では食べているけど栄養不足?と考える方もいると思います。大切なのは3大栄養素のバランスです。例えば、糖質を例に挙げると、甘いお菓子は瞬間的に吸収されますが、長続きしません。イメージとして、紙を燃やすのと一緒。特に砂糖など単糖類が多いものはエネルギーが続かず、結果的にエネルギー不足(栄養不足)の時間が長くなります。
●鍼灸治療が有効な理由
「血流不足」であれば適度な運動、「栄養不足」であれば食事を見直す事で改善が見込めます。運動療法や食事療法は、鍼灸にはない良さがありますが、これらと鍼灸を併せて行う事で大きな効果があります。例えば、鍼を刺したり、お灸で温める事で全身の血流改善効果と、内臓の働きを高める効果がある為、栄養を吸収しやすくなります。大まかに言うと、鍼灸は身体の能力を引き出してくれる施術です。つまり、頑張って取り組んだ運動療法と食事療法の効果を、最大限にしてくれるという事が鍼灸治療の有効な理由です。
●多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に対する当院での鍼灸施術
当院では大きく分けて、東洋医学的アプローチと西洋医学的アプローチを用いて施術を行います。東洋医学的アプローチは多岐に渡り、主に「ツボ」を用いて特定の内臓の働きを高めたり、自律神経を整える、全身の血流量を増やす施術を行います。西洋医学的アプローチはエビデンスに基づき、特定の器官を直接刺激して患部の血流量を増やします。特に骨盤の中の血流を増やす効果が高く、主に子宮内膜や卵胞の成長が欲しい際に施術を行います。その日の身体の状態やクリニックでの進捗状況、生理周期などに合わせて最も良いアプローチを選択し、身体の改善を図ります。
●多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と東洋医学の関係
PCOSの方が特に影響を受けやすい部位が、東洋医学では『脾』という器官です。消化器、特に「胃」と「子宮」に関わりが深いとされている器官で、消化吸収を担い、栄養を取り出して全身に配る働きがあります。この『脾』が弱ると甘いものを欲すると言われています。仕事などで思い悩みすぎると変調をきたします。また、座りすぎると傷む性質がある為、デスクワークの方は要注意です。思い当たる部分がある方も多いと思いますが、セルフチェックの方法があります。上記の「脾胃」に当たる部分に注目をして下さい。舌の色はピンクで、全体に凹凸が無く、舌の表面にうっすら白い苔が付いているのが理想です。もしも、舌の赤味が強い、舌の中心が割れている、舌の縁に歯の痕がある、苔の黄色いなど、理想の状態から離れていれば、すでに不調をきたしているサインです。
●多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に有効なツボ
東洋医学的アプローチの際に、実際に使用する一例をご紹介します。
- ②陰陵泉〔いんりょうせん〕と④三陰交〔さんいんこう〕は治療で頻繁に使われます。
⇒共にすねの内側にあるツボで、『脾』の流れをよくする作用があり、足の冷えやむくみがある場合は弱っている事が多いです。
- ➁+⑧照海〔しょうかい〕の組み合わせは一層効果が強くなります。
- ④+⑥太谿〔たいけい〕は組み合わせると体力が落ちている時に有効です。
- ⑦中封〔ちゅうほう〕は血液の流れを調整するツボで、生理中などに押して痛みがあれば治療点になります。
このように、直接治療点としてツボを選択する場合や、組み合わせてツボの相乗効果を狙うなど、様々な方法で改善を図っていきます。
●当院の鍼灸施術による効果・反応
当院の鍼灸施術はPCOSの『排卵しにくい』問題に対して高い効果があります。正しく対応していけば8割以上妊娠は可能です。
- 無排卵だった患者様が定期的に自然排卵ができるようになった。
- 40日以上あった生理周期が28日周期に整ってきた。
- 無理だと思っていた自然妊娠ができた。
上記の様なお声を頂きます。特に、諦めていた自然妊娠ができたと伺った時は私達も非常に嬉しく思いました。ただ、ここまで至るのに施術を開始して短くとも3ヶ月程度は掛かります。これは、卵子の成長と関係しています。卵子の準備は半年以上前から始まり、生理の約3ヶ月前からホルモンの影響を受け、成長に変化がでてきます。卵子の成長を加味して、短くとも3ヶ月、理想は半年以上前から継続した施術を行う事で改善がみられます。
●終わりに
PCOSで妊娠が難しいと諦めるのではなく、ご自身が妊娠のできるグループに入ることの方が良いと思います。人よりも身体と正しく向き合う事が大切な体質ですが、ちゃんと改善はできます。鍼灸治療はその大きな近道です。一人で悩んでいたり、相談する相手が分からない時には私達がいます。その時はぜひ頼ってください。この記事を読んで下さった方の支えになれたらスタッフ一同幸いです。この記事を書いたのは、
東京鍼灸京橋
新橋・日本橋エリアで働く鍼灸師です。PCOSや食生活改善に強みあり。授かりに向けて施術を行いつつ、不妊に悩む方に向けて妊活コラムを書いています。
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