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原因不明の不妊について(自然妊娠・男性側)

今回は子供を望んでタイミングを計っているけれど、なかなか赤ちゃんを授かれないと悩む方に向けて、男性側の不妊要因と検査等について解説していきたいと思います。

自然妊娠の流れ


まず原因不明の不妊を解説する前に、自然妊娠に至るまでの過程についてお伝えしていきます。

  1. 膣内で射精
  2. 精子が子宮頸管の頸管粘液を通って洗浄され、子宮内に入る
  3. 次に卵管に向かって精子が泳ぎ、卵管を通って卵管膨大部へ到着、待機
  4. 卵巣にある卵胞が育って、排卵⇒卵子が放出される
  5. 卵子が卵管の先にある卵管采(らんかんさい)にキャッチされる
  6. 卵管膨大部で精子と会い、受精
  7. 受精卵が分割をしながら卵管を通って子宮へ向かう
  8. 受精後、約7日程度で子宮内膜に潜り込み、着床⇒妊娠成立

参考⇒ソフィ 妊活からだナビ

以上の流れが自然妊娠の過程になります。この流れはとても重要で、どこにも問題がなければ9割の方は妊娠します。原因不明の不妊では、いずれかに問題がある可能性あります。

男性側の原因不明の不妊の3大要因

先程お伝えした自然妊娠の過程において、男性側に次に挙げる3つに問題がある場合、自然妊娠が難しくなります。

  • 造精機能障害
  • 精路の通過障害
  • 精機能障害

男性側の問題は、第一に「精子を造る能力があるorない」が大きな分かれ道です。第二に精液を出す通路が塞がっているかどうか、第三に勃起障害を代表とする性行為自体が行えるかが問題に挙げられます。シンプルに言えば男性の役割は女性に精子を届けることです。その精子を作ることができなければ子孫を残せませんし、作ることができても届けられなければ同様です。それぞれの問題に対して、勃起不全などは男性自身に気付くことができますが、精子を作る能力と、精液の通り道の問題については自身では分かりません⇒(無精子症と呼ばれる)早期に子供を授かりたいとした場合、クリニックにて精液検査を行うことをお勧めします。

point⇒男性自身に問題がないかを知る


造精機能について

まずは、男性不妊の大きな分かれ道である造精機能について解説していきます。
精子は栄養・ホルモンを基に70日程度かけて精巣で作られます。ある程度成長が進んだ段階で、精巣の横にある精巣上体(副睾丸)に送られ、約5~10日間精子の修正等を行い、成熟精子となります。成熟した精子はそのまま精巣上体に蓄えられています。精子は毎日1億匹程度作られていて、一度の射精で1~4億匹程度が放出されます。
射精時には精子は精管を通り、精嚢や前立腺の分泌液(精漿)と一緒に射精され、精液になります。精液の1~5%程度が精子、他90%以上は精漿で、精子をダメージから守る役割があります。

造精機能の検査

造精機能の検査は不妊クリニックや泌尿器科での精液検査が一般的です。もし問題があった場合でも基本的には経過観察になります。ただし、複数回の精液検査でも状態が悪い場合や、明らかな異常所見がある場合は触診や血液検査を行う場合があります。

精液所見の基準値

定期的に精液所見の基準値は更新されており、最新(2021年)のWHOの精液所見では↓

  • 精液量:1.4ml以上
  • 精子濃度:1600万/ml以上
  • 運動率:42%以上
  • 総運動精子数(精液量×精子濃度×運動率):1638万以上
  • 正常形態率:4%以上(奇形率96%未満)

しかし、基準値はあくまで妊娠に必要な最低ラインであり、例えば精子量も3.0ml程度あると自然妊娠しやすくなります。精子濃度でいえば、正常値は6000万~8000万匹以上であり、自然妊娠を望む場合は5000万匹以上が必要になります。

point⇒基準値=『正常値』ではない!妊娠に必要な最低限のレベルの事


精液所見で分かる治療方針

自然妊娠が可能か、不妊治療が必要かを判断する上で、総運動精子数が多く用いられます。これは動いている精子の総数を表します。

  • 1,638万以上: 性行為で自然妊娠する可能性が高い。1年間不妊の場合、人工授精のステップアップ検討
  • 1,638万未満~900万以上:人工授精の推奨。人工授精を 5回以上行っても妊娠しない場合、ステップアップを検討
  • 900万未満~500万以上:自然妊娠は難しく、体外受精を検討
  • 500万未満: 顕微授精を検討

造精機能の問題

男性不妊の8割は造精機能の問題によるものです。作られた精子の何に問題が生じているかで呼び方が変わり、大きく分けて「数」と「運動」によって分けられます。


「数」に問題がある場合

  • 乏精子症
  • 無精子症(さらに2つに分けられる)

「運動」に問題がある場合

  • 精子無力症

他に奇形精子症も挙げられますが、総運動精子数の判断の上では数の方が優先される為、上記を解説していきます。

乏精子症について

乏精子症は精子数が少ない状態で。精液1ml中に精子が1600万匹未満を乏精子症と呼びます。
自然妊娠を望む場合は1ml中5000万匹以上が望ましいため、乏精子症の場合、自然妊娠ができる可能性は低くなります。乏精子症の原因は、生活習慣の乱れ、食生活の乱れ、過度なストレス、ホルモンバランスの乱れ、精索静脈瘤、肥満、薬の服用などが挙げられます。私見では、仕事がデスクワークの方が多く罹患する印象です。生活習慣では、運動習慣が週2回以下、揚げ物など茶系の食事を好む方、酒・たばこを好む方、サウナが好き、射精頻度が週1以下の方も精子数が少ない印象があります。

乏精子症の対処

乏精子症は生活習慣によるものが比較的多く、生活習慣が問題の場合はそれらの見直しで改善が可能です。まず、妊活中の場合、射精頻度は最低でも3日に1度は必要です。食生活では、サプリメント以上に野菜や魚を中心に健康的な食事を心掛けることが改善の近道です。運動習慣では、ランニングよりも負荷を掛けた筋トレの方が良く、特にスクワットが効果的です。BMIが25以上の方はこれらの見直しで体重を落とすと良いでしょう。精索静脈瘤がある場合は手術適応になります。その他、ホルモン関連の問題の場合はクロミッドなど投薬の対応になります。

射精頻度が少ない方へ⇒亀田IVFクリニック幕張~Blog~ 禁欲期間が長いと妊活にはよないです

体重が気になる方へ⇒亀田IVFクリニック幕張~Blog~ BMI25以上では精液所見が優位に悪化!

無精子症について

無精子症は、精液中に精子が見当たらない状態を指します。無精子症は造精能力自体に問題がある「非閉塞性無精子症」と、主に精路に問題がある「閉塞性無精子症」の2つに分けられます。非閉塞性無精子症の要因は、過去に性病など何かしらの感染症の罹患歴や、元々の遺伝子異常などが挙げられ、精子自体が作られない状態です。閉塞性無精子症の要因は、鼠径ヘルニアの発症歴や陰嚢にこぶがある場合、精巣上体炎などが挙げられ、精子は作られるものの外に出てこられない状態です。検査方法は共に、不妊クリニックや泌尿器科にて複数回の精液検査を行い、本当に精子が見当たらないかを確認します。もし、見当たらなかった場合、以下の検診を行い慎重に精査をしていきます。

  • 触診
  • エコー検査
  • ホルモン検査
  • 遺伝子検査

無精子症の対処

無精子症の場合、自然妊娠は難しく、基本的に顕微授精の対象になります。検査を行い、必要に応じてクロミッドやホルモン剤等の服用や手術が適応になります。ただ、どちらの無精子症でも日常生活など見直すべき部分は見直し、必要な時に備えて精子の質を意識して生活すると良いです。

精子無力症について

精子無力症は精子の運動率が悪い状態を指します。運動率の正常値は70~80%で、健康な男性であれば55%以上といわれています。対して、運動率が40%以下、さらに前進運動率が30%以下の状態の場合、精子無力症と診断されます。精子無力症の原因は精索静脈瘤や乱れた食生活、ストレスなどの可能性があるといわれていますが明確にわかっていません。経験則では、仕事が事業主やデスクワークの方、睡眠不足、性欲減退気味の方に多い印象を受けます。検査は精液検査のほか、触診にて睾丸が小さかったり、ふにゃふにゃしていると精子無力症を認める傾向があります。

point⇒乏精子症と併発することが多い


精子無力症の対処

まず精索静脈瘤がある場合、手術適応になります。その他、必要に応じて薬を服用する場合があります。それ以外の場合、精子は体調の影響を受けやすいため、サプリメントを服用したり食生活の見直しを行うことが多いです。男性は射精の直前にテストステロン値(男性ホルモン値)が最大1.8倍になり、精子に活力を与えます。筋トレや射精頻度を増やすなど、日常からテストステロン値を高く保つよう努めることも大切です。

性機能障害について

性機能障害は勃起不全や射精障害などを指します。勃起障害は性交前からに勃起できない場合や、勃起が維持できず性交中に不全になってしまう、いわゆる中折れが挙げられます。これらの多くはプレッシャーやトラウマなど精神的な側面から多く発生します。射精障害で最も多いのは膣内射精障害です。マスターベーション時にかなり強く握るなど、強刺激に慣れてしまいマスターベーション時は射精可能も、性交中に射精できない障害です。他に逆行性射精があり、これは射精した感覚はあるものの精液が出てこず、膀胱側に押し出されている障害です。内尿道括約筋という筋肉が働くことで精液が外に放出されますが、糖尿病やストレスなどで働きが悪くなることで起きる障害です。

精機能障害の対処

勃起障害についてはバイアグラなどの服用が一般的です。これについては、通院や使用にかなり抵抗のある男性もいらっしゃいます。ただ、服用すると「自信が持てた」という意見が大多数ですので、勇気を出してもらえると良いでしょう。膣内射精障害の場合、マスターベーション時の強刺激⇒弱刺激に移行するリハビリを行います。女性の気持ちも分かりますが、男性を責めてしまうと勃起障害に繋がりかねないため、優しい目で見守ってあげると良いかと思います。逆行性射精の場合、内尿道括約筋を働かせる内服薬にて改善を図ります。

終わりに

男性の問題は女性としては聞きにくく、伝えにくいかとも思います。また、気持ちの面ですれ違いも生じやすく、ケンカに発展しているケースも良く耳にします。特に、男性側が基準値を超えていたからといって協力をしてくれなくなったことがほとんどです。男性にはあくまで基準値は妊娠のできた平均の下位5%(偏差値34)の数値であって、正常値ではないとお伝え頂けたらと思います。この記事が妊活で頑張る方の参考になればと思います。

鈴木大樹
東京鍼灸京橋
新橋・日本橋エリアで働く鍼灸師です。PCOSや食生活改善に強みあり。授かりに向けて施術を行いつつ、不妊に悩む方に向けて妊活コラムを書いています。

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